大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)493号 判決

被告人 盧光玉

〔抄 録〕

次に被告人に対する昭和二十八年一月二十四日附起訴状記載の公訴事実第一は「被告人は朝鮮人であるが、昭和二十七年四月二十八日から三十日以内に当時の居住地である東京都江東区長に対して外国人登録証明書の交付を申請しなければならないのに昭和二十八年一月十三日までこれが申請をしないで本邦に在留した」ものであるというのであるが、被告人が昭和二十八年四月二十八日当時本邦に在留していたという確証はなく、及び前同日附起訴状記載の公訴事実第二は「被告人は朝鮮人であるが行使の目的をもつて昭和二十七年十二月二十三日頃川崎市上並木町三十番地の自宅において李奉花から東京都千代田区長発行李鎮基名義の外国人登録証明書を譲り受けたものである」というのであるけれども本件李鎭基名義の外国人登録証明書は被告人がこれを譲り受けた当時すでに偽造に係るものであることが明らかであり、かくの如き偽造の登録証明書は外国人登録法第十八条第一項第十号にいうところの他人名義の登録証明書にあたらないものと解すべきであるから、以上の各公訴事実は犯罪の証明がない場合及び罪とならない場合にあたるものというべきであるから刑事訴訟法第三百三十六条により無罪の言渡をなすべきものとする。

なお判示第二の事実につき原審は「川崎市巡査部長古渡年夫は被告人が李鎮基名義の偽造登録証明書を所持していることは密告によつて予め知つて居り被告人を逮捕する際証拠物件の蒐集のため登録証明書の提出を求めたものであり、被告人はこの求めに応じて前記偽造証明書を提出したことが認められるが、被告人の右の所為をもつて偽造公文書の行使すなわち偽造公文書をその用法に従い真正の文書として使用したものということはできない」としてこの点につき無罪を言い渡し、また遠藤弁護人も「本件は押収差押の手段として被告人から登録証明書を差し出させたものであり被告人の意思如何を問わず強制力をもつて本件証明書を差し押えたものである。特に被告人はこれを真正に作成された被告人のものの如くに装うて出してはおらず、むしろ不真正である旨を素直に述べているのである。以上の理由によつて偽造有印公文書行使罪は成立しないから無罪である」と主張するけれどもいやしくも偽造文書を真正の文書として使用するにおいてはその行使罪の成立することは勿論であり、また右文書の被呈示者においてその文書の呈示を求める権限あると否とは該文書の行使罪の成否にはなんらの影響なきものと解すべく、なお本件において前記古渡巡査部長は被告人に対し刑事訴訟法上の強制力を用いて前記登録証明書の提出を命じたものでないことは前記各証拠により明らかであるから、仮令被告人は右巡査部長から該証明書の提出を求められたにせよ被告人において任意に真正の証明書として前記偽造に係る外国人登録証明書を呈示したものと解すべきであるから行使罪の成立することはまことに明白である。

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